2011年4月16日土曜日

難しいことを考えない・・・双羊尊

高校時代の友人と、根津美術館に行ってきた。『燕子花図屏風』が年に一度、この季節に出展されるという。
 
改装されてから二度目の根津美術館。
前回は『青磁展』息が詰まるほど美しかった。
美しすぎるものは見ていて、切なく、苦しくなってくる。見て帰ってきて、半日動けなかった。

今回の展示のメインは、有名な燕子花図屏風。音楽を聴いているようなリズム感が素敵。
金箔の上に乗った顔料の色がほとんど褪せたりはがれたりしていないのは、奇跡に近い。

タッチが軽く、安らげる。
いろんな不安を忘れ、しばらく眺めて楽しんだ。

 
[根津美術館の入館券『双羊尊』の図柄]
 
根津美術館、実はお気に入りは、『双羊尊』*という、チケットの図柄にもなっている、青銅製の酒器。
饕餮文(とうてつもん)という渦巻き状の神獣が彫り込まれた殷代の青銅器だが、ごつごつした硬いイメージのものが多い中、これだけ、やわらかい曲線が印象的。
にしても、繊細な文様、角や耳までまったく隙のない曲線、鋳物でこの複雑な形状の器を作るのに、どんな型があって、どんな技術がつぎ込まれていたのか、溶けた金属を、どう流し込むと、薄い耳の先まで、優雅な曲線の角の先まで、繊細な文様の隅々まで回り込むのか、考えると眠れなくなりそう。

* 『双羊尊』:この双頭の偶蹄目、ロフティング作・井伏鱒二訳『ドリトル先生アフリカ行き』に「オシツオサレツ」として登場するのに、ちょっと似てる。動物と話ができるドリトル先生なら、数千年前の中国から来たこの羊に、なんて話しかけるだろう。
 
何が何でも文様で埋め尽くさなければならないという青銅器が多い中で、ちょっとほっとできる、間の抜けた顔、ふくよかな曲線、あんまり難しいことを考えずに、時々羊くんに会いに行くかな。


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