2011年6月26日日曜日

最密充填問題・・・・本棚の悩み(闇)は深い

数学には最密充填問題というのがある・・・・例えば、無限の空間にたくさんの球体を入れるときに、ピンポン球を上下左右前後きっちり詰めたときよりも、まずは、球体を蜂の巣のように六角形とみなして平面を埋め、次の段は、ちょっとずらして、そこでできた三角形のくぼみの部分に埋めていくように詰めた方がたくさん入る*。
 
* どういう詰め方が最密なのかを証明するのはけっこう難しいらしく、平面に円を充填する円充填問題では、ハニカム構造(六角形)が最密なのは証明されいているが、上記の方法が、球体の充填について本当に最密なのかは、未証明らしい。(→詳しくはWiki先生に聞いてね
 
現実問題においては、空間が無限ではないので、冷蔵庫の棚にジャム瓶をいくつ詰められるかは、ジャム瓶の直径と、棚の幅や奥行きで、六角形方式か、正方形方式か、最適な充填方法が変わる(実体験に基づく実験の結果であり、当家の冷蔵庫での最適が証明されているわけではない)。
 
本の場合、もうちょっと複雑である。
まず、サイズが違う。文庫も新書も、ハードカバーもあって、新書やコミックスは微妙に高さが違ったり、もちろん、厚みも違う。
 
さらに、考慮すべきは、見つけやすさ。スペースを最大限利用するために、本棚は、前後に使うのが基本。奥側に入った本は、当然見つけにくい。シリーズ物については、面に出ている部分と、奥の列を連続させておくことで、裏にある本を容易に想像できる。
 
ジャンルもそろえたい。関連する本は近くに置きたい。
 
大まかには、
・文芸単行本
・コミックス
・ビジネス/仕事関係
・社会学書/歴史・考古
・数学/生物学/その他学際書
・SF(といってもスター・ウォーズとスター・トレックの不完全な一式)
・ミステリーとファンタジー(これも、ホームズとトールキンの不完全な一式)
・歳時記(これで一棚ある)
・語学書、英語の本
・料理・お茶(お茶星人ですから、これも一棚分)

本じゃないけど
・音楽CD
・アルバム・将棋盤(三寸盤なので、大型本の並びがちょうどよかった)・小型のライトテーブル(最近、デジカメなので登場場面は、昔のポジを眺めるときくらい)
・・・・

というところを、サイズと、ジャンルと、読みやすさを考慮して適宜配置する。高さが揃うと、上にも少し入る。


[苦闘の末の、とりあえず、ほぼ最密充填状態]
他の棚はここまできっちり最密じゃないところもあります。
 
上段は、好きな作家シリーズ単行本:小川洋子さん、小林恭二さん、夢枕獏さんなど・・・
・・・『朗読者』と『人質の朗読会』を並べているあたりに、ちょっとしたこだわり。
・・・『陰陽師』シリーズ近刊の奥には、旧刊が入っている。

その下は、新書(わりと社会学/歴史系が多い)。本好きの本(『朗読者』つながりで、『図書館戦争』とか、『今日の早川さん』とか、松岡正剛さんの一連の本とか、ちょっと下には『花もて語れ』も)、奥側は辞書(最近、電子辞書の利用が多く、紙の辞書を引っ張り出す頻度は少ない)。
 
実は、各棚の上奥には、もう数冊入るスペースがあるが、そうすると、奥の下の本を出すのが一苦労なので、最密充填とは言えないけど、まあ我慢。
 
こんな感じに詰めると、続刊中のシリーズとか、増えるたびにちょっとずつ移動しないといけない。
例えば図書館戦争、別冊シリーズがあと2巻出るので、そしたら、下の薄手の諸星大二郎と藤田和日郎のコミック文庫を『うしおととら』の棚に移動だな、で『銀のスプーン』を料理/お茶関係の棚に・・・・。
『陰陽師』の次が出たらどうするかなあ。
 
本棚になんとか収めるという意志を持って、なんとかやりくりすると、棚の配置って面白い。
 
 
最近本屋さん巡りをしていると、棚に込められた意志が感じられる本屋さんは行ってて楽しい、本棚と対話ができる(でも、真剣さが伝わってくるだけに、ゆるく、ぶらぶらできない)。
さらに、本屋さんには、売る、と、在庫管理するというミッションもあるので、それはそれは大変だろうな。
 
配本されたからとりあえず並べた、というゆるい本屋さん(残念ながらそういうところも多い)は、ある意味何も考えずに済むから、安らぐなあ(笑)
 
ということで、ちゃんとした本屋さんに週3~4回(1回で数軒の場合もあるので、延べ回数では、1日平均1軒くらい)、ゆるい本屋さんには息抜きで週1回くらい行ってます。
 
こうなると中毒だね(笑)。
 
素敵な本屋さんを応援したい。
(だけど、本棚がこんな状態なので、そうそう買えない悩みもあるのだが・・・・)

2011年6月18日土曜日

寒天を煮溶かすように・・・・『凍りのくじら』

青梅でジャムを作った。
作成工程は「大変だった」の一言*で終了。
 
* さすがにそれではさびしいので、余計な解説:青みを残し、なおかつあく抜きをするために、水にさらすこと一日、二度ほどゆでこぼし、まだ青いうちに(硬い)身を剥き、種の回りの果肉も惜しいのでこちらは軟らかくなるまで煮て裏ごし、青みの残る身に砂糖を適当に加えながら煮込み、全体に軟らかくなったらかき回して実をほぐす。で、甘さととろみを見ながら残りの砂糖をざーっと加えてできあがり。
 
[青梅ジャムのできあがり]
中瓶=400cc、小瓶=256cc
 
[家族や友人に贈るのに梱包]
いちばんたくさんあった梱包材が各種ブックカバーだった(笑)。
 
で、ちょっと大人の味。
寒天で固めるとおいしいかなと、寒天を煮溶かす。
 

[じっくり弱火で、焦げ付かないように時々かき混ぜながら]
溶けかけの寒天は、固まりかけた流氷のよう。
 
寒天を煮溶かしながら、辻村深月『凍りのくじら』(講談社文庫)を読んだ。
というよりも、何ヶ月か前に買って、少しずつ読み進めていたもの。
 
ところが、なんだかつらい。周囲に適応できない、女の子が主人公。共感が難しく、読んでいて辛い。
で、読みかけのまま、しばらくベッドサイドに置いていた。
 
溶けかけの寒天は流氷みたいだ。
流氷の中で抜け出せずに苦しむ鯨のシーンから始まるこの小説を、改めて手に取った。
 
粉末の寒天とは違って、棒寒天を溶かすには時間がかかる。弱火で温めながら、沸騰しないように気を付けて、少しずつ溶かしていく。底が焦げ付いたりしないように、均一に火が通るように時々かき混ぜる。なめらかに溶けるにはけっこう大変。
 
『凍りのくじら』を一節読んでは、鍋をかき混ぜ、もう一節読んでまた鍋を・・・・。
寒天が少しずつ溶けていく間、ストーリーが動き出し、やわらかく、あたたかくなっていく。
 
エピローグの手前までたどり着くのと、寒天がなめらかに溶けるのとは、ほとんど同時。
いったん、本を置いて、青梅ジャムを投入してよくかき混ぜ、ボウルに少しずつ注いで、固まってきたらもうひとすくい。
  

[青梅の寒天寄せのできあがり]
青みが残って、ちょっといい感じ。
あら熱が取れたら冷蔵庫へ。
 
で、本に戻って、無事にエピローグを読み終えた。
 

[辻村深月『凍りのくじら』(講談社文庫)]
背表紙がドラえもん色なのは、偶然かなあ。
 
素敵な、すこし不思議な、お話でした。
読み終えてよかった。
 
章のタイトルが、ドラえもんのひみつ道具になっている、ドラえもんリスペクト本。
ドラえもん好きにも読んでほしいけど、なによりも、何となく居場所のない気がしている人に読んでほしい。