2016年12月31日土曜日

2016年ベスト本

去年もそんな投稿をしたので、今年のベスト本、約10、発表します。


1. 宮下奈都『静かな雨』(文藝春秋)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163905716



 宮下奈都さんのデビュー作。とても、好き。美しい装丁、美しい文章、魅力的な登場人物、とてもとても好き。
 作中に言及される『博士の愛した数式』の博士のように、日々の記憶を保持できない、ヒロイン。本屋大賞受賞後の第一作が、この作品の初単行本化というのがとても意味があるように思われる。

2. 吉田篤弘『電球交換士の憂鬱』(徳間書店)
http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198640866



 クラフトエヴィング商會的な世界を文章で読むとこんな感じかなと。電球の交換を仕事にする不死身の主人公という、設定からして萌える。

 吉田篤弘 文、フジモトマサル 絵『という、はなし』(ちくま文庫)もとてもいい。フジモトマサルさんの絵に、吉田篤弘さんが文章をつけたという、ショートストーリー集。


3. 川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』(講談社)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062199650



 ディストピア小説を書かせたら、川上弘美さんにかなう人はいないかなと。
 『このあたりの人たち』(SWITCH PUBLISHING)もとてもいい。


4. 津村記久子『浮遊霊ブラジル』(文藝春秋)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163905426



 謎の短編集、粗筋を説明しようとしてはいけません。
 表題作「浮遊霊ブラジル」、もう、なんというか、すばらしい。

5. 芦沢央『許されようとは思いません』(新潮社)
http://www.shinchosha.co.jp/book/350081/



 前作、『いつかの人質』(KADOKAWA)も力強い作品だが、これは、すごい。その筆力に脱帽。怖い作品は苦手なので、もうちょっとハートウォーミングな作品も読みたいところ。
(未読だが、『雨利終活写真館』を楽しみにしている)

6. 彩瀬まる『やがて海へと届く』(講談社)
http://kodansha-novels.jp/1602/ayasemaru/



 自らの震災体験を描いた『暗い夜、星を数えて』でデビューした彩瀬さんが、自らの中でその体験を昇華して、この作品に至ったのだろう。重いテーマだが、救いがある。

 最新刊『朝が来るまでそばにいる』(新潮社)は、ちょっと怖い。彩瀬さんらしい救いはあるものの、こわごわ読み返したりしています。

7. 崔実『ジニのパズル』(講談社)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062201520



 デビュー作。移民文学としての、『さようなら、オレンジ』や『Masato』につながる緊張感のある作品。

8. ウンベルト・エーコ、中村エツコ 訳『ヌメロ・ゼロ』(河出書房新社)
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309207032/



 ウンベルト・エーコの遺作。なんでこんなに怪しく、魅力的に書けるんだ。前作、『プラハの墓地』(東京創元社)もよかったけど、衒学的すぎて、ちょっとついて行けないところもあったりして、『ヌメロ・ゼロ』の方が好きだな。

9. こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社)
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-83940-1.html
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-83941-8.html



 これはもう、傑作。アニメも何度も観にいってしまう奇跡の作品です。
 未見の方はぜひ。

10. エラ・フランシス・サンダース、前田まゆみ 訳『翻訳できない世界のことば』(創元社)
http://www.sogensha.co.jp/booklist.php?act=details&ISBN_5=70104



 『翻訳できない世界のことわざ』(創元社)もよかったけど、第一弾のインパクトがすごかったので、そちらを選びました。たくさんの言葉が併存する豊かな世界に住んでいてよかった。

番外:大前粟生『回転草』「たべるのがおそい Vol.2」所収(書肆侃侃房)
http://www.tabeoso.jp/

 これ、すごいよ、大前粟生さん、きっととんでもない作家になるかと。

山田航『ことばおてだまジャグリング』(文藝春秋)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163904443

 これもオススメ。歌人、山田航さんによる、言葉遊びエンサイクロペディア。楽しい。
 未読ですが、中村航さんの回文とフジモトマサルさんの絵という『まさか逆さま』も気になっています。

 他にも、こんな作品がよかった。

文月悠光『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)
せきしろ『たとえる技術』(文響社)
丸山正樹『漂う子』(河出書房新社)
フジモトマサル『二週間の休暇』(講談社)
今日マチ子『百人一首ノート』(メディアファクトリー)
塩田武士『罪の声』(講談社)
小川糸『ツバキ文具店』(幻冬舎)
西加奈子『i(アイ)』(ポプラ社)
森絵都『みかづき』(集英社)
村山早紀『桜風堂ものがたり』(PHP研究所)
水谷フーカ『Cl(シーエル)』(1月と7月/星雲社)

 2017年も素敵な本と出会えますように。