2011年9月19日月曜日

ツール・ド・本屋さん7(完)・・・・渋谷への長い道『隣のアボリジニ』


ツール・ド・本屋さん7店目は、立川の予定だったが、多摩センター(→前回「ツール・ド・本屋さん6」参照)で雨が激しくなって、晩ご飯を食べ、それでも止まず、少し小降りになって来たのが8時、あきらめて元々10店舗目に想定していた渋谷に向かう。

渋谷までは約30km、甲州街道まっしぐらなので、普段なら速度もそこそこ出る。小雨が降っていて、路面がウェットなので、慎重に走ってもまあまあ1時間半。

ところが、時々やってくる豪雨。メガネは水滴で見えないし、路面の深い水たまり、後輪からと行き過ぎる車とが盛大に跳ねを上げる。本はパッキングしたものの、ウィンドブレーカーを浸みる雨が、体温を奪い、さすがにこれは無理、と、歩道橋の下/高速道路の下/閉店したガソリンスタンドの屋根などに避難。ゲリラ豪雨をやり過ごす。
尺取り虫のように、10分走っては休み、ライトに水が入って点滅しなくなっては軒先で修理(といってもばらして水を拭き取って戻すだけ)、国道20号を東へ、東へ。

寒く、べしゃべしゃで、かなり気分的につらい。

渋谷駅前にたどり着いたのは12時を回っていた(既に午前様・・・・)。



【7店舗目:TSUTAYA渋谷店】

DVDやCDのレンタル・販売で有名なTSUTAYAさんだが、実は、書店としても、店舗数や規模でトップクラス。渋谷のTSUTAYAは、ハチ公口の斜め前、センター街の入り口にそびえる巨大なメディア店舗の6~7階。時々やっているフェアや展示も素敵(先日の手塚治虫『火の鳥』原画展、震えました)。


到着は深夜だったので、ツイッター中の人とは会えず、ちょっと残念。


まずは店内を一周。フロアはさほど広くないが、随所に仕掛けが見られるお店。複製原画の展示、フェア棚、関連陳列などがなかなかのツボ。

中でも目を引いたのが、『獣の奏者』、『守り人』シリーズで有名な上橋菜穂子さんのコーナー。ファンタジー小説に並んで、人類学者でもある上橋菜穂子さんの学者としての代表作。


【選んだ本】
上橋菜穂子『隣のアボリジニ』(ちくま文庫)、この本がファンタジー小説に並んで売っているのを見て、嬉しくなって購入。

[上橋菜穂子『隣のアボリジニ』、誇りと妥協、興味と偏見が同居する現実]
冷静で中立的な視線を普通の街に暮らす先住民に注ぐ、
民族間の軋轢を描く、ベストセラーファンタジー作家の原点。

雨はまだまだ強い。
店内併設のスターバックスで、コーヒーとスコーン。温かい飲み物が嬉しい。

ようやく人間の気持ちに戻って、多摩センターで買った『地上はポケットの中の庭』を読む。


少しあたたかい気持ちになって、店を出ると、雨が止んでいる。ラッキー…と、ガード下に停めた自転車まで数十メートル。鍵を外し、荷物を固定、ライトの点灯を確かめ、さあ出発。
家まではもう少し。

・・・・と、一瞬にして再びゲリラ豪雨。
ガード下に閉じ込められて再び1時間。


ってなハプニングはありましたが、何とか2時過ぎに帰宅。
(多摩センターから、6時間かかって帰宅ということですね。)

ま、無事の帰宅が何より。
ああ、寒かった(と、残暑の中ブログを書く)。


【まとめ】
今回、7店舗のそれぞれ個性的な本屋さんで、個性的な本を一冊ずつ購入。
いずれも、書店員さんの気持ちのこもったお店で、迷う時間も選ぶ時間も素敵な時間でした。

ああ、いい旅だった。
今回行けなかった、立川、吉祥寺、阿佐ヶ谷の本屋さんはあらためてチャレンジするとして、今度は天気がいい日に、もう少し余裕を持って回りたいですね。

2011年9月11日日曜日

ツール・ド・本屋さん6・・・・雨は多摩丘陵を潤して『地上はポケットの中の庭』


ツール・ド・本屋さん6店目は、多摩センター。

海老名のお店がなかなか素敵で、しかもフリペコーナーで読み始まってしまったりしたので、もう夕方(→前回「ツール・ド・本屋さん5」参照)。
海老名~多摩センター間は、結構遠く、直線的に抜ける道がない。国道16号を北上して、多摩丘陵を迂回するように行く作戦。国道に出た頃は既に暗くなっていた。16号線は、都心部を大きく迂回する幹線道路。自転車のためというよりも、トラックのための基幹国道である。比較的道はよいが、路肩は決して状態がよくない。前照灯2灯を点灯して、尾灯は点滅。ひたすら北上。

と、雨が降ってきた。天気予報では、夜からは関東南部もところにより雨。ここで来たか。
多摩センターのお店には、ツイッターつながりの友人がおり、「夕方まではいるよ」とのことだったが、雨の中を急ぐと危険なので、「間に合わない、またの機会に」連絡。ウィンド・ブレーカーを着込んで慎重に走り、7時頃に多摩センターに着。


【6店舗目:啓文堂書店 多摩センター店】
啓文堂書店は、京王線の駅ナカ店の多い、いわゆる鉄道会社系書店。JRのBookExpressや東武鉄道の東武ブックス(草加に住んでた頃、だいぶお世話になりました)などの駅ナカ書店好きな私にとっても、なかなかやるなあというお店が多い(特に渋谷店にはよく行く)。

多摩センター店は初訪問。「小さなお店だよ」と聞いていたが、なかなかの品揃え。ここも、『クロネコ通信』というフリペを発行していて、オススメやフェア棚が楽しい。

ここで、1店舗目のブックポート203 鶴見店で店長オススメ棚から薦められた『ボーナス・トラック』(→「ツール・ド・本屋さん1」参照)の著者、越谷オサムさんの特設棚を発見。越谷さん得意の音楽モノが並ぶ。津軽三味線の『いとみち』が気になったが、なにより、「いいね!」と思ったのが、越谷さんの色紙。

「多摩センターオサムに改名してもいい  越谷在住 越谷オサム」

これだけ打ち出して売ってくれるお店って、作家さんや出版社さんからすると、嬉しいだろうな。


と、越谷オサムさんに気を取られつつ、実はこのお店だけは、買う本が決まっていた。
ツイッターで前から気になっていた本をオススメされ、「多摩センターで買いますね」と約束の本。



【選んだ本】
田中相『地上はポケットの中の庭』(講談社 ITANコミックス)
新人マンガ家さんのデビュー作とのことだが、豊かなイマジネーションと、自分の世界を持っていて、気持ちいい。やさしい、不思議な読後感。

[田中相『地上はポケットの中の庭』、表題作の他、巻末マンガも◎]
あ、あと、登場人物では、城間クンけっこういい感じ。

雨がひどくなってきたので、自転車をガード下に退避させ、晩飯。
それでも止まないので、さらにケーキと珈琲。
もちろん、読み終わってしまう。


少し小降りになってきた。買った本をきちんとビニール袋に包み、鞄に収める。さあ出発。

この後、立川、吉祥寺、阿佐ヶ谷、渋谷と回る予定だったが、ショートカットして渋谷を目指すことにした。渋谷まで30kmくらいかな。あと1店舗、だが、「百里の道は九十九里をもって半ばとす」という格言を思い知るのは、これからだった。

ツール・ド・本屋さん5・・・・怪力乱神を語る『一鬼夜行』


ツール・ド・本屋さん5店目は、海老名。

藤沢の本屋さんが中堅チェーン店でかなりフリーダムにがんばっていたので(→前回「ツール・ド・本屋さん4」参照)、ツイッターでのフリーダムさに定評のある本屋さんに期待が盛り上がる。一度うかがったことはあるのだが、今回は事前予告付き、しかも途中中継あり( #ツールド本屋さん で動向が把握されている)なので、光栄にも店長さんにお目にかかれることに(ツイッターでは何度も語りあっているから、勝手に旧知の仲のような気がしているけど初対面)。



【5店舗目:三省堂書店 海老名店】
ここは、数ある三省堂チェーンの中でも、有楽町店と並んで積極的なツイートが目立つお店。アカウント( @ebina_sanseido )、是非一度ご覧ください。
この記事を書いている瞬間(土曜日深夜)も、『寄生獣』というコミックスについて熱く語るツイッター座談会の座長をされている。

駅前のビル、ビナウォーク1のワンフロア、決して大きな店ではないが、POPや選書、陳列によるオススメが明解ではっきりお店の意志が伝わる。品揃えのバランスもいい。大量陳列や強力POPから選ぼうかと思ったが、見つけてしまった一冊。タイトルだけでも魅力的。

店長さん、ツイッターで想像していた通りのフットワークの軽い方。
ツイッター書店員間のハブとして機能していて、全国から書店発行のフリーペーパーを集め、店内に展示/配布、さらに、それぞれのお店へのデータ配布もしているらしい。
(作ったフリペデータの再配布とかも)


【選んだ本】
小松エメル『一鬼夜行』(ポプラ文庫)
「百」でなくて「一」なところに、えっ。さらに著者名小松エメルさん、どうやら新人らしいけど、妖怪研究で有名な小松和彦さんとはご親戚だろうか?


[小松エメル『一鬼夜行』、他の「百鬼夜行」関連本に加わった新顔]
(この中には名著、小松和彦『百鬼夜行絵巻の謎』や、小林恭二『本朝聊斎志異』も)

もちろん、節電とはいえ夜も明るい都会に住み、合理性に基づく職業で糊口をしのいでいる私、妖怪変化は信じていない。でも、妖怪モノはけっこう好きで、一番好きなマンガは、藤田和日郎『うしおととら』だし、今市子『百鬼夜行抄』も次を楽しみにしている。小説でも『陰陽師』シリーズは毎回買っているし、『八犬伝』も上田秋成も『山月記』も大好き。
一方で、妖怪研究(社会学的にもしくは歴史学的に妖怪を理解することで、歴史上のメンタル面に迫る試みも好み。最近では、菊地章太『妖怪学入門』(講談社)とか、面白かった。

・・・・と、話は尽きないが、この『一鬼夜行』、面白かった。明治初期、魑魅魍魎(ち、み、もう、りょう…具体的にどんなのかわからず)が跋扈(ばっこ…これも、このセットでしか使ったことがない)する江戸を引きずった男と、百鬼夜行から落ちこぼれ、時が止まっているような、不思議と明るい小鬼の小春、脇の人物、妖怪ともに人物/妖怪造形がうまい。

シリーズで次回作もあるらしい。
次も読まないと。


次は多摩センター(→次回「ツール・ド・本屋さん6」参照)。先は長い。
夕刻が迫る。店長さんに早々に退散のご挨拶をして、再び自転車に。
雲が出てきた。夜には雨もあるらしい。




2011年9月5日月曜日

ツール・ド・本屋さん4・・・・本好きにもいろいろ『ビブリア古書堂の事件手帖』


ツール・ド・本屋さん4店目は、藤沢。

鎌倉の本屋さんがあまりにも硬派(→前回「ツール・ド・本屋さん3」参照)だったので、ついつい長居、さらに鳩サブレで有名な豊島屋さんでランチ。湘南の浜辺を走る国道134号を急ぎ、江ノ島の手前で北上、藤沢を目指す。

目的の本屋さんは藤沢駅前、ところがなかなか発見できない。で、駅前のビルの中をうろうろしたら見つけた。

【4店舗目:有隣堂 藤沢店】
駅前の古いビルの2階~4階に入っているが、入り口がわかりにくく、なかなか難しい。ちょっと立地的には不利かも。が、店内は平日午後にもかかわらず賑わっていた。やはり神奈川地区では強い有隣堂さん。地元に根付いた本屋さんなんだろうな。

ここは、ツイッターで拾った面白ネタ、出版社擬人化コーナーという目的もあって、興味津々。
出版社さんをそれぞれ特徴を捉えつつ萌えキャラ系のイラストにして、キャラのプロフィールも入っている。ちとイケメンで軽い角川グループ君とか、SF好きでメガネがかわいい早川書房さんとか、小学生キャラだけどみんなに人気の小学館くんとか・・・・。
イラストもかわいいが、出版社さんのとらえ方も面白い。ぜひ、お近くにお寄りの際は2階の特設コーナーをご覧ください。もちろん、それぞれの出版社から、オススメ本を展示販売している。

絵本の読み聞かせ+工作のイベントなど工夫して集客していて、好感の持てるお店。立地の不利は、行きつけのお店になれば解消できる。


【購入した本】
有隣堂藤沢店さんで買ったのは、三上延『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』(メディアワークス文庫)。大船、北鎌倉が舞台、しかも本にまつわるミステリー、湘南地区にいるウチに買わねばと思っていたのだが、鎌倉のたらば書房さんはあまりにも硬派で、買えず(というか売っていたかどうかわからない)、有隣堂さんでゲット。

[三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』]
表紙の女性が古書店探偵の栞子さん。本好きで、美人。

いわゆるアームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)の一種で、持ち込まれる本を頼りに事件を解決していく。自分は必要がない限りあまり古書店には行かないのだが(ハウスダストが苦手なので、どうも鼻がむずむずする)、いわゆる稀覯本好き(ビブリオマニア)という人もいて、初版で、美品で、しかもアンカット(昔は仮製本で小口断裁していない本をペーパーナイフで切りながら読んだ)な本に高値がついたりする世界。はまると奥が深そうだなあ。

マンガでいうと金魚屋古書店の斯波さん(芳崎せいむ『金魚屋古書店』小学館)みたいな栞子さん。だが、本を読むのが苦手という店員、大輔を通して語られるせいか、マニアの深みにはまらず、軽い読後感。いいね。


次は海老名(→次回「ツール・ド・本屋さん5」参照)。このまま北上。
海老名のお店は一度行ったことがあるが、そのときはご挨拶できなかったので、楽しみ。

2011年9月4日日曜日

ツール・ド・本屋さん3・・・・求道者の秘かなる情熱『日本の分水嶺』

ツール・ド・本屋さん3店目は、鎌倉。

横浜みなとみらい地区(→前回「ツール・ド・本屋さん2」参照)から鎌倉街道を南下。大船→北鎌倉と抜けて、鎌倉を目指す。

途中。北鎌倉建長寺前を通過。ここには、ちょっと苦い思い出が・・・・(ここでは語らず)・・・・道尾秀介『月と蟹』(文藝春秋、前回直木賞受賞作)作中に建長寺の裏山が出てくるので、それも思い出しつつ、少し気持ちが揺れる。

が、あまりここは集中。鎌倉へ抜ける道は少なく、狭い。天然の要塞都市、東京・横浜方面から抜ける道が限られているため、北鎌倉から鶴岡八幡宮に抜ける道路はいつも混雑している。路肩は狭く、片方は柵のない側溝。

目的の本屋さんは鎌倉駅前なので、八幡宮の正面ではなく、小町通りを抜けるが、今度は観光客の混雑。竹下通りと変わらん。


【3店舗目:鎌倉:たらば書房】
小町通りの喧噪を抜け、反対側江ノ電の方の駅前すぐ。黄色い日よけの、小さな町の本屋さん。
今回訪問の中ではもっとも小さな店。

前に訪ねた方に「すごい」と聞いていたが、実際、すごい。
有名なところでは、千駄木の往来堂書店さんも、町の本屋さんにして選書とセンスで独自の地位を築いているが、もしかすると、それ以上かも。

人文系、自然科学系の選書がすごい。たとえて言うと、往来堂書店と神保町の東京堂書店の1階人文オススメ本を合わせたような選書。雑誌やコミックスも置いているが、主力は圧倒的に趣味的な本。どうも老夫婦らしいお二人でやっている店のようだけど、かなり趣味的で深い。さらっと、チョムスキー『生成文法の企て』とかが平台に置いてある。
鎌倉の本屋さんということで、鎌倉にちなんだ本を買ってすぐに移動だなと思っていたが、甘かった。言語学、人類学、地理学、哲学・・・・ツボにはまる本も多い。じっくりと棚を見ていく。


【購入した本】

ある著者の本が目にとまった。
堀公俊『日本の分水嶺』(ヤマケイ文庫)。

堀公俊さんといえば、ファシリテーション(会議の活性化促進)や企業の意志決定に関わる本を多数出版するその道の専門家。『ワクワク会議』(日本経済新聞出版社、名著です)などは愛読書。で、ヤマケイ文庫???

[堀公俊『日本の分水嶺』(ヤマケイ文庫)]

著者略歴を見ると同一人物らしい。
で、買ってみた。

趣味で分水嶺*ハンター(分水嶺を訪ね歩く人)をやっているらしい。で、日本列島の背骨にあたる分水嶺をひたすら漏れなく、重複なく(=MECEに)語っていく本(この辺が本業の技を思わせる)。
地形、文化、歴史、アプローチの旅程、名物から観光資源まで、鉄道や道路、行政区画と違って、明示的には引かれていない線を、ひたすら南下していく。ところによっては、地形がゆるやかで分水嶺がわかりにくい場所も、人工的に整備された結果、水路が立体交差しているところ、カルスト地形などで地下水路の場合もあって、分水嶺を追うだけでも、かなりスリリング。

* 分水嶺:厳密な定義は難しいが、ざっくりいうと、その線を境に、降った雨が川となって日本海に流れ下るか、太平洋に流れ下るかで区分した場合の境目。

長編旅行ミステリーを読むように読んだ。
スリリングで面白い。

さあ、次は藤沢。
国道134号線を走り、藤沢に抜けよう。

稲村ヶ崎から江ノ島をかすめて、サザンの『希望の轍』のように。
河合克敏『とめはねっ!』(小学館)の舞台だ。

次回へ続く(→次回「ツール・ド・本屋さん4」参照)


【追記】2011/9/5
台風12号による豪雨被害がありました。ちょうどこの『日本の分水嶺』を読んだ後だったので、それぞれの地形、地名がよりいっそう心に刻まれます。行方不明の方々、道路が寸断されて閉じ込められている方々、これから被害が予想される東北・北海道の方々、ご無事を。

2011年9月3日土曜日

ツール・ド・本屋さん2・・・・空想とリアルの揺らぎ『現実入門』

ツール・ド・本屋さん2店舗目は、横浜みなとみらい。
1店目の鶴見(→前回「ツール・ド・本屋さん1」参照)からは、国道15号をひたすら南下、横浜を過ぎ、海側に道なりに行くと、高層ビル立ち並ぶみなとみらい地区が見えてくる。

ランドマークタワーやパンパシフィックホテル、昔、横浜トリエンナーレで巨大なバッタがたかっていた(確か2000年)船の帆のようなグランド・インターコンチネンタル・ホテル、巨大な観覧車が一望できる桜木町駅前。


【2店舗目:紀伊國屋書店 横浜みなとみらい店】
駅前にできた新しいショッピング、コレットマーレみなとみらいに2010年3月開業とのこと、まだ新しい本屋さん。

内装もおしゃれで、本屋さんっぽくない。強いていうと、TSUTAYA六本木店や、業種違うけど銀座のハンズみたい。

夏休みの最終週ということで、家族連れが多い印象。品揃えも、絵本や児童書、宿題、行楽、ファミリー層を意識した、あんまりとんがってない感じ。が、さすがは紀伊國屋、バランスが取れた選書。
横浜ローカル本もけっこう充実。


【購入した本】
で、何を買おうかと物色していたら、「紀選文庫 紀伊國屋書店スタッフが選んだ文庫百冊」というコーナーが目に入る。

そこで、穂村弘『現実入門』を発見。

  [穂村弘『現実入門』(光文社文庫)]

『ほんとうは違うんだ日記』や『短歌の友人』、『絶叫委員会』、編著の『短歌ください』など、現実とのギャップをとことん突き詰める穂村ワールドに絡め取られている私としては、これは見逃せない。

で、買ってみた。

体験するのは、ごくごく普通のこと。穂村さんが語ると、現実と穂村さんの認識とのギャップが面白い。

ところが、おどろくべきことに、穂村さんが未体験なことは、わりと自分自身と重複していることに気付く。最初のテーマは「献血」だが、20歳の頃に1回したが、その後、2回目はつい最近・・・・。「相撲観戦」も「占い」(1回くらいあるかも)も「競馬」も・・・・私も、穂村さんと編集者のサクマさんが言う「現実」から遠いような気がする。

みなとみらいという未来都市で、穂村さんの妄想や葛藤と現実の間に生じる陽炎のような揺らぎを自覚させられる。

穂村ファンとしては、うれしいような、微妙なような・・・・。
でも、このギャップに自覚的でありつづけることが、穂村さんの文章を、短歌を生むのだなと思う。

・・・・と、これだけだと、普通の穂村本、この本にはもう一つしかけが。
ネタバレになるので秘密。ぜひぜひ、最初から最後まで、順番通りに読んでください。

この本も何度も読み返す大切な本の一冊になった。


次は鎌倉を目指す(→次回「ツール・ド・本屋さん3」参照)。
大船経由、鎌倉街道を南下。浪人生のころ、最初に来たツーリングが鎌倉だった。
回りを山に囲まれ、坂道がきつかった思い出が、ちと気合いを入れて出発。

2011年9月2日金曜日

ツール・ド・本屋さん1・・・・鶴見の船長オススメの『ボーナス・トラック』

先日8/30の自転車の小旅行、ツール・ド・本屋さん(→前回「ツール・ド・本屋さん」参照)、10店舗回る予定を雨天のため7店舗しか回れませんでしたが、非常に濃い旅でした。

夏休み中なので、ちょっとずつご報告していきます。

ルールのおさらい
  • 訪れた町で、1店舗、事前に選んだ本屋さんに寄る。
  • 同じ系列店はかぶらないようにする。
  • その店のオススメ本を1冊買う。(重量の関係で、文庫、新書、コミックスに限定)

予定のコース
  1. 鶴見:bookport203 鶴見店
  2. 桜木町:紀伊國屋 横浜みなとみらい店
  3. 鎌倉:たらば書房
  4. 藤沢:有隣堂 藤沢店
  5. 海老名:三省堂 海老名店
  6. 多摩センター:啓文堂 多摩センター店
  7. 立川:オリオンパピルス*
  8. 吉祥寺:BOOKSルーエ*
  9. 阿佐ヶ谷:書原 阿佐ヶ谷本店*
  10. 渋谷:SHIBUYA TSUTAYA
* 結局、雨がひどくなり、7~9 は今回はあきらめた。


旅の模様は、ツイッターで #ツールド本屋さん で実況報告していたので(もしくはtwilogで8/30~31あたりを見てね)、買った本と本屋さんのご紹介など、読後感も合わせてご報告。

自宅を出て、国道15号を快調に南下。晴れていい天気。ちょっと蒸し暑い。


【1店舗目:鶴見:ブックポート203 鶴見店】
店舗サイト:http://www.inoue-kouzai.co.jp/book.html
公式ツイッター:@bookport

国道15号沿い、東京からは、鶴見橋を渡ったすぐのところ。帆船を思わせる白い外装。上記サイトが井上鋼材となっているように、いわゆる異業種参入店舗ではあるが、長く地元に根付いたお店。系列の栗平店にもうかがったことがあるが、敷居が高くない町の本屋さんでありながら、オススメ本がはっきりした、意志を感じるお店。国道15号を巡航する自転車星人には、格好の港。

POPにも工夫があって、コーナー分け、作家別陳列がわかりやすいサイン、オススメやフェアに意志を感じる陳列、POPも版元支給のものと手描きをうまく活用しながら、探しやすさとオススメをうまく伝えている。

本を愛する熱血店長さんとは、以前からツイッターなどで知っており、以前お店にもうかがったことがある、2度目の訪問。

入るとすぐ、オススメ本コーナー。店長一押しの『ジェノサイド』の大量陳列。以前、新聞の書評で、神奈川の書店員さんなどのツイートで人気に火がついたとの紹介があったが、そのしかけ店舗のひとつ。(でも、単行本だし、重量を考えて断念)


【購入した本】
で、熱血店長さんにオススメを聞いてみた。と、案内してくれたのが、「店長の勝手にオススメコーナー」。棚ひとつ分、一冊ずつ熱く語れる本をセレクトしている。
読書傾向についてひとしきりヒアリングしたあと、薦めてくれたのが、『ボーナス・トラック』。

[越谷オサム『ボーナス・トラック』(創元推理文庫)]

幽霊と会社員が・・・というあらすじ紹介は無粋なのでやめておくけど、そうだなあ、森絵都『カラフル』と、藤田和日郎『うしおととら』、映画の『TAXI』みたいなストーリー(わけわからん紹介でもうしわけない)・・・衝撃で重苦しいオープニングから、ちょっと拍子抜けするほどの軽さ、ファンタジックでちょっとだけ手に汗握って、あたたかい読後感、素敵なお話です。

ファンタジーノベル大賞受賞作、で、デビュー作。デビュー作にしてこの構成力、読ませる力。ファンタジーかつミステリーで、ちょっとだけサスペンスな、すこし不思議(Sukoshi Fushigi)な物語。

面白い。
ちなみに、作者、越谷オサムさんは、越谷在住(この作家さんは、また後で登場します→「ツール・ド・本屋さん6」参照)。ペンネームもそこからかな。舞台は地元っぽい感じ(以前、隣町に住んでいたので)。

店長、オススメありがとうございました。
ラムネ、ごちそうさま。ジリジリと暑くなってくる中、懐かしい甘さが沁みました。

自転車で1時間弱なので、休みの日にはときどき行けるかな。
またお邪魔しますね。

次は、横浜、紀伊國屋書店 横浜みなとみらい店(→続きは「ツール・ド・本屋さん2」参照)

2011年8月21日日曜日

ツール・ド・本屋さん・・・・そこに本屋さんがあるから

久しぶりの更新です・・・・まだ夏休みを取れていない やがた です。

夏休みは、家に文鳥様がいたりするので、遠出の旅行はできず、日帰りで自転車ツアーを予定中。
名付けて、ツール・ド・本屋さん

●ツール・ド・本屋さんのルール
  1. 事前に複数の書店を選定する。
  2. 一つの街に一つの書店とする。
  3. 同じ系列店を二つ選ばない。
  4. 必ず、一冊本を買う(そのお店のオススメを選ぶ)。
  5. 購入後、その街の喫茶店などで休憩し、数ページでも読む。
  6. 次の街に移動。
●今回のコース
  1. 鶴見:bookport203 鶴見店
  2. 桜木町:紀伊國屋 横浜みなとみらい店
  3. 鎌倉:たらば書房
  4. 藤沢:有隣堂 藤沢店
  5. 海老名:三省堂 海老名店
  6. 多摩センター:啓文堂 多摩センター店
  7. 立川:オリオンパピルス
  8. 吉祥寺:BOOKSルーエ
  9. 阿佐ヶ谷:書原 阿佐ヶ谷本店
  10. 渋谷:SHIBUYA TSUTAYA
行った先の本屋さん、汗だくで、自転車ウェアのオジサンが現れても、邪険にしないでくださいね(笑)

この自転車で、
[パリジェンヌ2号:24年モノの愛車]

このウェアで行くつもり。

[チーム パオパオビールのジャージ]
黒田硫黄『茄子』(講談社)を原作として作られた、DVD『茄子 スーツケースの渡り鳥』主人公が着るジャージ。


合計、ざっくりで160kmくらいかな。
それぞれ、特徴があって、がんばってる本屋さん。
本選びと休憩を考えると、けっこう一日いっぱいいっぱいかも。

日程未定だが、おそらく、8/31か、9/1頃を予定。

途中、本選びで迷ったり、お茶の時間で本に読みふけってしまったりすると、後半、阿佐ヶ谷、渋谷はパスしてもいつでも行けるからよいことにしよう。

行ったことがある本屋さんは、鶴見、海老名、阿佐ヶ谷、渋谷、あとは、ツイッターやブログで知り合った方のオススメや情報に基づいて選択。
何人か、ツイッターつながりの知人も(お会いしたことのない方も)。

特に参考にしたのは、『空犬通信』(→こちらのサイト参照)。書店ブログでは、並ぶもののない、書店愛にあふれたブログです。


こんなツアーに行くんだ、と、会社で言ったら、だれもうらやましがってくれない。
何で?という声が多い。

自転車の旅には目的は求めてはいかん。その過程を楽しむのだ。
しかも、街々に本屋さんがあって、喫茶店もきっとあって、うまいコーヒーと本がある。きっと幸せに違いない。あえて言うならば、そこに本屋さんがあるから・・・・

・・・・ので、むなしく一人で吠えてみる「どーだ、うらやましーだろう」・・・・

(今日はその書店選定と、自転車のメンテナンス。バーテープを巻き直したりしていたが、途中巻きそこなって巻き直し・・・・真っ白なバーテープだけに、汚れが目立つ。無念。今度はあきらめて濃い色にしようかな・・・・)

では、ツール・ド・本屋さんの旅(→次回「ツール・ド・本屋さん1」参照)をお楽しみください。

2011年7月6日水曜日

久しぶりの自転車活動・・・・罠にはまった

夕方、風が涼しくなったので、久しぶりに自転車活動・・・・ところが、思わぬ罠に。
 
自転車はお買物自転車だが、タイヤはロードレーサー(詳細はこちら→世界一速いお買物自転車「パリジェンヌ2号」公開(2) - ロード機能 - ホイール編)、歩道を走るのは危険だし*、車道の歩道寄りを左側通行。ところが、日本の道路は自転車のためにできてない。路側部分は、だいたい凹凸が激しいし、側溝の蓋も危険。普段は気を付けているのだが、ちょっと油断した。
 
* 都内だと自転車歩道通行可能となっているところが多いが、あくまでも原則軽車両なので車道、歩道も通ってもいいけど、歩行者優先でゆっくり通ってねというのがルール。
 
左車線を走る自動車との間隔がなかったので、歩道ギリギリを走る。路側部分の側溝には蓋があるが、苦手なグリルタイプ。ちょうど、幅がタイヤがすっぽり入る。もちろん、普通は溝状ではなく、横棒が通っていて、多少がたつくが、すっぽり落ち込むことはない。


[絵を描くのが面倒だったので、溝の本数減らしてますが、こんな感じ]
上面図で、ちょうど、溝の太さとタイヤの太さの関係がおわかりですね。
が、横棒の上を、多少ガタガタと通過できるはずだった。

ところが、強い衝撃。
溝の縁にガツンと当たった感覚。
 
数メートル走って、タイヤはフラットに。パンクだ。


[排水溝の角に強打/グリル状の蓋の横棒が錆びて落ちていた:上図]
[多少のガタガタで通過/正常な蓋、沈み込みはタイヤが吸収:下図]
 
黄昏前、多少路面は見えにくかったとはいえ、まだ明るい時間。見えてたのに、観ておらず。無念。
こんなところに罠があろうとは。
 
気を付けよう。側溝蓋と、路面電車の線路。
 
新品とは言えないけど、まだ500kmくらいしか走ってないはず。タイヤの在庫はないし、修理は週末だな。交換しやすい前輪だったのと、普通に停車できたのでケガもなかったのが、不幸中の幸い。
安タイヤとはいえ、3000円くらいの出費/買い出しを含めると2時間くらいのロス。
 
リムやスポークにダメージが行ってないことを自転車の神様に祈るばかり。
(36穴のチューブラーリム=しかもMAVIC GP4=なんて、今やレアモノなのでね)
 
【追記】あ、明日から東京国際ブックフェア&国際電子出版エキスポ。本好きとしては楽しみなイベントだけど、会社でも出展しているから、ちょっとは仕事モードで行かねば。

2011年6月26日日曜日

最密充填問題・・・・本棚の悩み(闇)は深い

数学には最密充填問題というのがある・・・・例えば、無限の空間にたくさんの球体を入れるときに、ピンポン球を上下左右前後きっちり詰めたときよりも、まずは、球体を蜂の巣のように六角形とみなして平面を埋め、次の段は、ちょっとずらして、そこでできた三角形のくぼみの部分に埋めていくように詰めた方がたくさん入る*。
 
* どういう詰め方が最密なのかを証明するのはけっこう難しいらしく、平面に円を充填する円充填問題では、ハニカム構造(六角形)が最密なのは証明されいているが、上記の方法が、球体の充填について本当に最密なのかは、未証明らしい。(→詳しくはWiki先生に聞いてね
 
現実問題においては、空間が無限ではないので、冷蔵庫の棚にジャム瓶をいくつ詰められるかは、ジャム瓶の直径と、棚の幅や奥行きで、六角形方式か、正方形方式か、最適な充填方法が変わる(実体験に基づく実験の結果であり、当家の冷蔵庫での最適が証明されているわけではない)。
 
本の場合、もうちょっと複雑である。
まず、サイズが違う。文庫も新書も、ハードカバーもあって、新書やコミックスは微妙に高さが違ったり、もちろん、厚みも違う。
 
さらに、考慮すべきは、見つけやすさ。スペースを最大限利用するために、本棚は、前後に使うのが基本。奥側に入った本は、当然見つけにくい。シリーズ物については、面に出ている部分と、奥の列を連続させておくことで、裏にある本を容易に想像できる。
 
ジャンルもそろえたい。関連する本は近くに置きたい。
 
大まかには、
・文芸単行本
・コミックス
・ビジネス/仕事関係
・社会学書/歴史・考古
・数学/生物学/その他学際書
・SF(といってもスター・ウォーズとスター・トレックの不完全な一式)
・ミステリーとファンタジー(これも、ホームズとトールキンの不完全な一式)
・歳時記(これで一棚ある)
・語学書、英語の本
・料理・お茶(お茶星人ですから、これも一棚分)

本じゃないけど
・音楽CD
・アルバム・将棋盤(三寸盤なので、大型本の並びがちょうどよかった)・小型のライトテーブル(最近、デジカメなので登場場面は、昔のポジを眺めるときくらい)
・・・・

というところを、サイズと、ジャンルと、読みやすさを考慮して適宜配置する。高さが揃うと、上にも少し入る。


[苦闘の末の、とりあえず、ほぼ最密充填状態]
他の棚はここまできっちり最密じゃないところもあります。
 
上段は、好きな作家シリーズ単行本:小川洋子さん、小林恭二さん、夢枕獏さんなど・・・
・・・『朗読者』と『人質の朗読会』を並べているあたりに、ちょっとしたこだわり。
・・・『陰陽師』シリーズ近刊の奥には、旧刊が入っている。

その下は、新書(わりと社会学/歴史系が多い)。本好きの本(『朗読者』つながりで、『図書館戦争』とか、『今日の早川さん』とか、松岡正剛さんの一連の本とか、ちょっと下には『花もて語れ』も)、奥側は辞書(最近、電子辞書の利用が多く、紙の辞書を引っ張り出す頻度は少ない)。
 
実は、各棚の上奥には、もう数冊入るスペースがあるが、そうすると、奥の下の本を出すのが一苦労なので、最密充填とは言えないけど、まあ我慢。
 
こんな感じに詰めると、続刊中のシリーズとか、増えるたびにちょっとずつ移動しないといけない。
例えば図書館戦争、別冊シリーズがあと2巻出るので、そしたら、下の薄手の諸星大二郎と藤田和日郎のコミック文庫を『うしおととら』の棚に移動だな、で『銀のスプーン』を料理/お茶関係の棚に・・・・。
『陰陽師』の次が出たらどうするかなあ。
 
本棚になんとか収めるという意志を持って、なんとかやりくりすると、棚の配置って面白い。
 
 
最近本屋さん巡りをしていると、棚に込められた意志が感じられる本屋さんは行ってて楽しい、本棚と対話ができる(でも、真剣さが伝わってくるだけに、ゆるく、ぶらぶらできない)。
さらに、本屋さんには、売る、と、在庫管理するというミッションもあるので、それはそれは大変だろうな。
 
配本されたからとりあえず並べた、というゆるい本屋さん(残念ながらそういうところも多い)は、ある意味何も考えずに済むから、安らぐなあ(笑)
 
ということで、ちゃんとした本屋さんに週3~4回(1回で数軒の場合もあるので、延べ回数では、1日平均1軒くらい)、ゆるい本屋さんには息抜きで週1回くらい行ってます。
 
こうなると中毒だね(笑)。
 
素敵な本屋さんを応援したい。
(だけど、本棚がこんな状態なので、そうそう買えない悩みもあるのだが・・・・)

2011年6月18日土曜日

寒天を煮溶かすように・・・・『凍りのくじら』

青梅でジャムを作った。
作成工程は「大変だった」の一言*で終了。
 
* さすがにそれではさびしいので、余計な解説:青みを残し、なおかつあく抜きをするために、水にさらすこと一日、二度ほどゆでこぼし、まだ青いうちに(硬い)身を剥き、種の回りの果肉も惜しいのでこちらは軟らかくなるまで煮て裏ごし、青みの残る身に砂糖を適当に加えながら煮込み、全体に軟らかくなったらかき回して実をほぐす。で、甘さととろみを見ながら残りの砂糖をざーっと加えてできあがり。
 
[青梅ジャムのできあがり]
中瓶=400cc、小瓶=256cc
 
[家族や友人に贈るのに梱包]
いちばんたくさんあった梱包材が各種ブックカバーだった(笑)。
 
で、ちょっと大人の味。
寒天で固めるとおいしいかなと、寒天を煮溶かす。
 

[じっくり弱火で、焦げ付かないように時々かき混ぜながら]
溶けかけの寒天は、固まりかけた流氷のよう。
 
寒天を煮溶かしながら、辻村深月『凍りのくじら』(講談社文庫)を読んだ。
というよりも、何ヶ月か前に買って、少しずつ読み進めていたもの。
 
ところが、なんだかつらい。周囲に適応できない、女の子が主人公。共感が難しく、読んでいて辛い。
で、読みかけのまま、しばらくベッドサイドに置いていた。
 
溶けかけの寒天は流氷みたいだ。
流氷の中で抜け出せずに苦しむ鯨のシーンから始まるこの小説を、改めて手に取った。
 
粉末の寒天とは違って、棒寒天を溶かすには時間がかかる。弱火で温めながら、沸騰しないように気を付けて、少しずつ溶かしていく。底が焦げ付いたりしないように、均一に火が通るように時々かき混ぜる。なめらかに溶けるにはけっこう大変。
 
『凍りのくじら』を一節読んでは、鍋をかき混ぜ、もう一節読んでまた鍋を・・・・。
寒天が少しずつ溶けていく間、ストーリーが動き出し、やわらかく、あたたかくなっていく。
 
エピローグの手前までたどり着くのと、寒天がなめらかに溶けるのとは、ほとんど同時。
いったん、本を置いて、青梅ジャムを投入してよくかき混ぜ、ボウルに少しずつ注いで、固まってきたらもうひとすくい。
  

[青梅の寒天寄せのできあがり]
青みが残って、ちょっといい感じ。
あら熱が取れたら冷蔵庫へ。
 
で、本に戻って、無事にエピローグを読み終えた。
 

[辻村深月『凍りのくじら』(講談社文庫)]
背表紙がドラえもん色なのは、偶然かなあ。
 
素敵な、すこし不思議な、お話でした。
読み終えてよかった。
 
章のタイトルが、ドラえもんのひみつ道具になっている、ドラえもんリスペクト本。
ドラえもん好きにも読んでほしいけど、なによりも、何となく居場所のない気がしている人に読んでほしい。
 

2011年5月21日土曜日

本屋さん巡り・・・・書店フリーペーパーを渡り歩く

今日は抜けるような青空。自転車日和。
 
書店好きとしては、ちょっと気になっていた、書店フリーペーパーネタ。
 
有楽町三省堂店(近場だし、ツイート @yrakch_sanseido も面白いし、棚作りも、オススメもいい感じなのでよく行く)の『ブンブンコ通信』(文庫棚担当者のブンブンコさんが書いているらしい)と、丸善ラゾーナ川崎店(初めて、家から約10kmで多摩川なので、越えればすぐ川崎、ツイートは最近フォロー @maruzenkawasaki したけど、これまた面白い)が、書店フリーペーパーを交換して、両方置いているとのこと。
 
これは、両方に行ってもらいに行かねば(片方で両方もらえるのに、ここは、自転車星人的な短絡思考なのでご容赦)!
 
で、行ってきた。
 
ひたすら国道15号を南下。天気がいいわりには、空気が乾燥していて、走っていて気持ちいい。
時々レーサーやマウンテンバイクに抜かれるとスピードが上がるが、基本、のんびり巡航。
  
昼前に川崎駅西口を大規模開発(たしか大きな工場跡地)した、ラゾーナ川崎というショッピングモール。広い。
 
丸善ラゾーナ川崎店さんも、ワンフロアで広い。
特集コーナーやオススメ本が随所にポイントがあって、飽きない。
 
で、フリーペーパーをゲットしました。

[最近こんなの読みました(丸善ラゾーナ川崎店)/ブンブンコ通信(三省堂書店有楽町店)]

◆『最近こんなの読みました』
基本、丸善の書店員さんが、読んで面白かった本を紹介する、「書評じゃなくて読書日記」とのこと。
確かに、書評というよりも、書店員さんの本への思いが伝わってくる冊子。

私も最近読んだ、有川浩『県庁おもてなし課』(角川書店)、小川洋子『人質の朗読会』(中央公論新社)が紹介されていて、嬉しかったな。

『人質の朗読会』、いい本です。造本も、装丁も、そしてストーリーも、文章も美しいです。ハッピーエンドではないのですが、あたたかい気持ちになるのはなぜだろう。
 
で、丸善さんでは、この冊子とは関係なく、『家守綺譚』を読んでファンになった梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』(新潮文庫)を購入(このあとの旅程を考えて、ハードカバーは避けたというのも)。
 
◆『ブンブンコ通信』
こちらは文庫限定。ブンブンコさんと、文庫姫さんが書いている文庫限定の紹介フリペ。4ページ。
ブンブンコさん、店内のあちこちにも地雷(POP)を・・・森見登美彦『恋文の技術』(ポプラ文庫)の恋文のようなPOPを読んで、ついつい手に取る。目次、最初のページから、あ、これは買わないと後悔しそうな・・・既に地雷を踏んでいる感じ。
 
三省堂さんでは、『恋文の技術』と、杉田圭『うた恋。2』(メディアファクトリー)を購入。
 
そのあと、同じ有楽町の交通会館に入っている、むらからまちから館(全国の地域産品を売っているお店)で、宮城県産のずんだ大福を購入して帰宅。
 
本について、もうひとつ。
 
ウンベルト・エーコ/ジャン=クロード・カリエール『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』(阪急コミュニケーションズ)を読み終えた。
 
普段速読派で、薄手の文庫なら30分。200ページくらいの単行本も1時間(電車通勤のとき、往復)くらいで読むのだが、これは、あまりにも造本が美しすぎて、買うかどうか迷って1ヶ月、読み始めるのに1ヶ月、さらに、毎晩ちょっとずつ読んで、ようやく読み終えた。
 
言うまでもなく、著者ふたりは、紙の本が絶滅するなんて思っていない。
が、電子化、図書館、焚書、選書、蔵書の意味、本に関わるあらゆる話題を縦横に駆け巡る。
 

[『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』、重厚な装丁、小口、天地の三方の深い青、美しい本はいいねえ]
ちなみに、バックに映り込んでいる本は、未読本。買ってきたらカバー(書皮)を掛けてもらって、読み終わったら外すことにしている。ここに写っている数冊+αで、十冊ちょいかな(思ったより少ないつもり)。
 
あんまり未読本を溜めないように、というよりも、おこづかいにも本棚スペースにも限りがあるので、これでも、本を買うのをセーブしてるのだ。
あ、『Marketing Management 12e』(英語版です)もまだ読み終わってないや。2年前くらいまで、ぼちぼち100ページくらい読んだんだけどな(まだ1/7だ・・・・)。
 
 
★今日の練習:自宅→川崎→有楽町→自宅(多少うろうろした分を入れて、80kmくらい)
 
☆今日のお茶:八女茶にずんだ大福。うまかった。
 

2011年5月15日日曜日

ジャムとの闘い済んで・・・・いろいろと片付ける

ゴールデンウイークは、ほぼジャム作りで終わった。

実家で取れた夏みかんのマーマレード(酸っぱくて生食にはちょっと苦手)。

山形の知人からのりんご一箱(放置していたら傷んできたのが出たので、なんとか処理せねば)。

で、弟の農園で採れたにんじん。
 

[製品群]
奥側左から:りんご大瓶(600cc)、りんご中瓶(400cc)、夏みかんマーマレード中瓶
手前左から:にんじん小瓶(256cc)、夏みかんマーマレード小瓶

我ながら、大量に作ったものだ。(計算すると、15リットル近い…ここにない、あげちゃったの、食べちゃったやつとかもあるので、今シーズン、ざっと、20リットル近いジャムを作ったことになるようだ・・・)
 
マーマレードが最も手間がかかる。皮むき、薄皮むき、皮の裏の綿取り、皮を刻む、あく抜きのゆでこぼし(3回)、薄皮と綿と種の煮汁作り(ペクチンが入っていて固まる)、あとは、身と皮と、薄皮の煮汁と砂糖を加えて、ひたすら煮込む。とろみが出るまで煮詰め、一鍋一日。
 
高野山の修行僧が胡麻豆腐を作るように、ほとんど修行。
でも、柑橘系の香りを嗅ぎながらの、一日仕事、悪くない。
 
家族に配り、同僚や世話になってる人に配り、フェイスブック友達とは本と交換し・・・、パンやクラッカー、ヨーグルトと食べ、ようやく、普通の量になってきた。
  
[マーマレード寒天]
寒天を煮溶かして、マーマレードをけっこう大目に加え(適当)、固める。クラッシュゼリーのように、スプーンで崩して、甘みが足りなければ、さらにマーマレードをかけ、甘くない炭酸水をかけたもの。
涼しげでいい感じ。 
  
今日は本棚の片付けも。
床の積ん読本がとりあえず棚に収納されたので、一安心。
(ただし、今月は積ん読本を消化しないと、新しい本を買うのをセーブせねば・・・・)
 
 
[しのぶちゃん、緑の黒髪]
GW明けから、本格的に緑に埋もれる、釣り忍のしのぶちゃん。
 
夏だねえ。

2011年5月6日金曜日

自転車で小旅行へ・・・・戦利品もなかなか

連休中、一日くらいは自転車でまともに走らねばと、神奈川方面に向かった。
ざっくり120kmくらいの小旅行。
 
いくつか気になる本屋さんがあって、目標地点として設定。

・三省堂書店(海老名店)
とにかくツイートが面白い。

お店も、ツイート以上に面白かった。
陳列の仕方、見つけやすい工夫、POP、オススメのポイント。
マンガの棚も文庫の棚も、もちろん、受賞作や関連作は目立たせているのだけれども、知らなかった作品を知る工夫に満ちていた。

あ、この棚を作っている人は、本が好きなんだな、と、わかる。
この人のオススメなら読まないと・・・という、気持ちのいいプッシュのされかた。

ここで、クラフト・エヴィング商會『おかしな本棚』(朝日新聞出版)を発見。
『どこかにいってしまったものたち』以来のファン。すごいツボ。だが、重い。
これからの80kmほどの旅程を考えて断念。

最近、『阪急電車』を映画で観てすっかりファンになったので、『図書館戦争』を購入。ラノベっぽいので敬遠していたのだがけど、いい作品を書く作家さんなので、敬遠することはないなと、文庫化されたのをきっかけに買ってみた。

・BOOK PORT203(鶴見本店)

神奈川県内に数店舗を展開する中堅チェーン店。
実は、去年の秋に栗平店は行ったことがある。ここも、ツイート面白い。
 
たまたまレジにいらっしゃった店長さん(熱いつぶやきがスゴイ迫力なので、もっと怖い人かと思ってました)に、ちょっとだけご挨拶。
 
こちらは、物理的な展示のしかたが、素敵。雑誌棚の平台の空間の使い方とか、すばらしい。
アクリル製でちょっと浮かした展示、POPの付け方、店舗スペースを余すところなく使いながら、圧迫感がない。
 
ここでは、同じ有川浩さんの『県庁おもてなし課』を購入。
  
・三省堂書店(経堂店)
先日GW中にオープンしたて。
上2店と比べては申し訳ないけれど、がんばっているけど、まだまだ伸びしろがありそうな感じ。
 
いい先達がチェーン内にいるんだから、成長に期待、ということで、海老名店で語った『図書館戦争』の続編、『図書館内乱』を購入。

[三省堂書店2店舗とブックポート203さんからの戦利品]
いずれも有川浩さんの作品。どうせ買うなら、一箇所にまとめて・・・という突っ込みは禁止。
 
 
今日の戦利品、もうひとつ。
 
[洗い立ての缶詰]
石巻の木の屋さん、津波で被災され、掘り出された缶詰を経堂の町の人が洗って、300円で販売。経堂の「さばのゆ」という飲み屋さんで買えます。
 
・木の屋石巻水産
 
・さばのゆ

 
「サンマの水煮」「サバみそ煮」「?」(ラベルがはがれて何だかわからなかったらしい)。
 
明日の朝飯は「?」で・・・・ちと楽しみ。
 

2011年5月4日水曜日

ベイダー卿、以外にいい人・・・・しかしこの組合せは

休日なので映画を観に行ってきた・・・・観た映画は『阪急電車』、こちらは、原作本を読んで、改めてブログに書く予定なので、ちょっとしたオマケ。
 
映画は有楽町のマリオン。駅から交通会館の脇を通って行くと、なにやら人だかりが。ストーム・トゥルーパーが募金活動をしている。映画が始まりそうだったので帰りに寄ることにして、映画に。
 
で、戻ってみたら、な、なんと、ベイダー卿まで・・・・しかも、ヨーダ様を乳母車に乗せている。
 
ストーム・トゥルーパーにもらったチラシによると、交通会館で、北原照久さんのコレクションのチャリティー展示をしているらしい(入場料が寄付に)。
 

[ヨーダ様とベイダー卿だけでもなかなかのところ、なぜか、ジャック・スパロウまで]
 
ベイダー卿、暗黒面に引き込もうというのか、なかなかフレンドリーで、肩を組んでくれた。
以外にいい人なのかな。
 
・・・・で、行ってきた。北原さんのコレクション。
巨大な鉄人28号からソフビ人形、メンコや双六まで、なかなか楽しめました。
 
太っ腹に撮影可能だったので、一枚。
 
[等身大仮面ライダー]
ちなみに、写り込んでいないが、左膝のところにコイン投入口があり、右膝からカプセルが出る、自動販売機。ちと手振れ。
 
5/9までやってるそうなので、ぜひ。
(入場料は全て寄付に回されるとのこと、北原さんも来ていて、ストーム・トゥルーパーやアナキン・スカイウオーカー、ボバ・フェット=汚しの具合からボバと判断=といっしょに、募金活動してました)
 
そうそう、有楽町の交通会館といえば、三省堂書店のあるビルです。
ツイッターをされている方、有楽町三省堂店さんのツイートは面白いので、ぜひフォローを。
 
●有楽町三省堂のツイッター
 
三省堂グループでは、有楽町店さん、海老名店さん( @ebina_sanseido )が群を抜いて面白いです。
ゴールデンウイーク中の自転車旅、書店巡りの予定。海老名、ちょっと遠いかなあ・・・・。

2011年4月29日金曜日

しのぶちゃん萌える・・・・夏は近いぜ

 
冬にすっかり葉っぱが枯れると新聞紙でくるんで仕舞い、暖かくなってきたら外に出し、水をやる。
毎年ゴールデンウィークくらいになると、蕨のような芽が出て、緑鮮やかな葉が伸びてくる。
 

[しのぶちゃん萌える]
頭と足のあたりに、渦巻き状の芽が出てるのわかります?
 
石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも  志貴皇子
 
という歌がありますが、表に出すのが遅いせいか、しのぶちゃんが萌えるのは、だいたい初夏の声が聞こえる頃。夏は近いぜ。
 
連休前半は何かとわたわたしていますが、後半5/6を休みにすると連続休みなので、自転車でちょっとぶらぶらするかな。
 

2011年4月20日水曜日

温泉パン再び・・・・ついにプレーンとオレンジをゲット

今日は午後半休で、田舎に行ってきた。
 
新幹線も、こないだ行ったときは(2011/4/6ブログ参照「温泉パンをゲット・・・・ちょっと重たくて、ちょっと幸せ」)、那須塩原行き「なすの」だけだったのだが、福島まで開通。
しかも、「やまびこ」も「Maxなすの」も走っていた(Maxって何だろう)
 
で、買ってきました温泉パン。
 

[「元祖 温泉パン」と「温泉パン オレンジ」]

「オレンジ」も、オレンジピールが効いて、なかなかうまいのだが、私はやはりプレーン派。家族はオレンジ好きなので、この組合せだとケンカにならないのだ。
 
今日はちとくたびれたので、以上。
おやすみなさい。
 
(今週末はジャムおじさんの予定です・・・・)

2011年4月17日日曜日

やわらかいこと、そして強いこと・・・・東京タワー耐える

あまりカメラを持って外に出ないのは、基本が出不精なのと、一眼レフに大きなレンズを着けてだと、どうしても大荷物になるから・・・・今日は思うところがあって、望遠を着けて出かけた。
 
自転車便のメッセンジャーバッグのように、たすき掛けに一眼レフを背中に背負って(角が当たってけっこう痛い)。東京タワーのふもとまで。

通勤路、国道一号は、慶応大学の角から、東京タワーがまっすぐ見える。3/11の地震で、先端がぺよっと曲がった東京タワーが気になっていた。
 
[東京タワー遠景、先端、わかります?]
 
脚部から見上げると、けっこうはっきりと曲がっている。
 
[脚部から見上げた展望台から先端]
 
タワー全体が受けたエネルギーを、柔構造の鉄骨がしなり、先端に鞭のようにエネルギーが集中したのだろうか。電波塔として50年。スカイツリーにもうすぐその役目を譲る東京タワー。鉄骨職人が手作業で組み立てたと聞く。
 
この、曲がった先端部分が、遙か数百キロ離れた地震のエネルギーの強さ、50年前の職人の心意気、やわらかいことと強いことが矛盾しないこと、いろんなことを考えさせる。
 
明日も東京タワーを見ながら出勤予定。
やわらかく、無理せず、一日一日を生きていくのだ。

2011年4月16日土曜日

難しいことを考えない・・・双羊尊

高校時代の友人と、根津美術館に行ってきた。『燕子花図屏風』が年に一度、この季節に出展されるという。
 
改装されてから二度目の根津美術館。
前回は『青磁展』息が詰まるほど美しかった。
美しすぎるものは見ていて、切なく、苦しくなってくる。見て帰ってきて、半日動けなかった。

今回の展示のメインは、有名な燕子花図屏風。音楽を聴いているようなリズム感が素敵。
金箔の上に乗った顔料の色がほとんど褪せたりはがれたりしていないのは、奇跡に近い。

タッチが軽く、安らげる。
いろんな不安を忘れ、しばらく眺めて楽しんだ。

 
[根津美術館の入館券『双羊尊』の図柄]
 
根津美術館、実はお気に入りは、『双羊尊』*という、チケットの図柄にもなっている、青銅製の酒器。
饕餮文(とうてつもん)という渦巻き状の神獣が彫り込まれた殷代の青銅器だが、ごつごつした硬いイメージのものが多い中、これだけ、やわらかい曲線が印象的。
にしても、繊細な文様、角や耳までまったく隙のない曲線、鋳物でこの複雑な形状の器を作るのに、どんな型があって、どんな技術がつぎ込まれていたのか、溶けた金属を、どう流し込むと、薄い耳の先まで、優雅な曲線の角の先まで、繊細な文様の隅々まで回り込むのか、考えると眠れなくなりそう。

* 『双羊尊』:この双頭の偶蹄目、ロフティング作・井伏鱒二訳『ドリトル先生アフリカ行き』に「オシツオサレツ」として登場するのに、ちょっと似てる。動物と話ができるドリトル先生なら、数千年前の中国から来たこの羊に、なんて話しかけるだろう。
 
何が何でも文様で埋め尽くさなければならないという青銅器が多い中で、ちょっとほっとできる、間の抜けた顔、ふくよかな曲線、あんまり難しいことを考えずに、時々羊くんに会いに行くかな。


『かばくん』・・・・こっそり ゆめみて

『かばくん』・・・・生涯に一冊の本を挙げるとしたら、まっさきにこれ。
 
岸田衿子さく・中谷千代子え『かばくん』(福音館書店)の作者、岸田衿子さんの訃報を目にした。
 
[『かばくん』、初版は1962年、まだ私が生まれていないころ]
 
こどものころ、読んでいた本は、多分、ぼろぼろになって買い直した1981年の36刷り。それでも補修したテープが変色してはがれかけてる。
  
子供の頃から何度も読み返し、自分の血となり肉となり、自分を作ってきた絵本。
改めて影響の大きさを思う。
 
どうぶつえんに あさが きた
いちばん はやおきは だーれ
いちばん ねぼすけは だーれ
 
もちろん、主人公かばくんは、一番ねぼすけ。
ねぼすけで、くいしんぼうで、自由で、好奇心旺盛で、楽しむことを知っているかばくん*。
 
* ねぼすけで、くいしんぼうなのは、『かばくん』のせいにしてはいけないですね。そこは自己責任で(笑)
 
何気ない動物園の一日が、平凡で平易だけど、やわらかく美しい言葉で語られる。
 
そして、最後はこんな一節で終わる。
 
おやすみ かばくん
どうぶつえんに よるがきた
こっそり ゆめみて ねむってくれ
おやすみ かばくん
ちびの かばくん
 
よい夢が見られますように。
心からご冥福を祈ります。
 
おやすみなさい。

2011年4月13日水曜日

本屋さんに敬意を・・・・本屋大賞2011

本屋大賞2011が発表された・・・・東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』(小学館)
 
ベストセラーになってしまうと、ついつい買えない、ちとへそまがりな私*。
この本は、じわじわとベストセラーランキングを上昇中に、大量陳列していた本屋さんの「この本を売りたい!」という熱意と、表紙イラストの雰囲気に負けてジャケ買い。
 
*過去の本屋大賞本では、読みたかったけど、売れてから読むのが悔しくて、読めないままになっている『夜のピクニック』や『告白』・・・・そうは言っても『天地明察』はほとぼりが冷めた頃に読むかな、という、無駄に意地っ張りな私。
 
軽い読み口、アームチェア・ディテクティブとしての緻密な構成。執事とお嬢様、そして嫌みな半端な金持ちの上司というキャラクター設定、毒舌の小気味よいせりふ回し。『三毛猫ホームズ』(最初の1冊しか読んでないのですが)みたいな、うまさが光る。
 
その後、ベストセラーランキングの一位に躍り出て、そして、本屋大賞を受賞のニュースが入ってきた。
読んだ本が評価されるのは、単純に嬉しい。
 
本好き、本屋さん好きな私。
本屋大賞については、売れてる本を追認しているだけでは、という、批判も聞かれる。
しかし、この本は面白そう、売れそう、と思った棚の担当者の書店員さんが、いい場所を確保し、本の詰まった重い段ボールを運び、工夫して陳列し、売れたら売れたで、商品の確保に苦労し、そして一冊ずつ売ってきた結果だから、思い入れがあって当然。
 
本の重さを知っている人たちの賞だから、敬意を表したい。
 
実はあまり新刊文芸書を読まないのだが、過去の本屋大賞本では、2冊だけ、たまたま受賞前に読んでいた。今回の『謎解きはディナーのあとで』と、小川洋子『博士の愛した数式』(新潮社)。
以来、小川洋子さんのファン。
 
今回の本屋大賞も、それをきっかけに、新たに本を好きになってくれる人が増えるといいなと思いつつ。
 
[『謎解きはディナーのあとで』と、小川洋子さんの新作『人質の朗読会』]
 
『博士の愛した数式』『猫を抱いて象と泳ぐ』もよかったけど、今作も期待。
 
美しすぎる表紙。
買うのに迷うこと1ヶ月、さらに読み始めるに1ヶ月。未読。
美しい本を読むには、なにかしら思い切りが必要。半端に読むと失礼な気がして。

2011年4月10日日曜日

花見に行ってきた・・・・こんなにつまらない番組は

いい天気。一昨日は強風、昨日は雨だったので、今日は花見日和。
 
酒は飲めないので、銀座「鹿乃子」であんずのあん蜜と、道明寺の桜餅を買って、お茶はペットボトルで我慢。
日比谷公園まで足を伸ばす。
 
春爛漫。
いまをはるべとさくやこのはな*・・・・

* 余談ですが、この歌を知っているかどうかで、百人一首を学校で覚えたか、競技として覚えたかが判別可能です。競技かるたは、上の句を読んで、下の句の書かれた札を取る競技ですが、競技中は、下の句は、全ての人が取り終わってから読み、次の上の句のタイミングを計るためにのみ、読まれます(ので、当然、下の句を読まれないと取れない人は、競技にすら参加できないことになります)。で、2枚目からは、前の札の下の句を読むことができますが、最初の札は、前の札がありません。そのため、「序歌」という、100枚に含まれない歌「難波津に咲くやこの花冬ごもり今を春辺と咲くやこの花」があります。この、101枚目の札(というよりも0枚目の札ですね)を知っているかが、競技としてのかるたを知っているかの証です。
 
[日比谷公園の桜、正に満開]
 
あんまり政治的な関心は深い方ではなかったのですが、今回、都知事選で、現職候補が、東日本大震災に関連して、「欲にまみれた人間に対する天罰」とか、「花見は自粛すべき」とか、つらい思いをされている方の心を逆なでし、ただでさせ萎縮しがちな経済を停滞させるような発言があり、何としても花見をせねば、と、出かけて行きました。
 
先ほど(午後8時)、開票速報の番組冒頭で、「石原候補当確」。圧勝。
政治的関心はないとは言え、選挙はほとんど棄権せずに行き、開票速報もだいたい大勢が決まるまで見てることが多いのだけど、一瞬で当確。東京は都議選もないので、以上、終了。
 
こんなつまらない番組はない。
対立候補が割れたとか、民主党が腰が引けていたとか、地震の影響で実質的に選挙戦がなかったとか、後付けで理由はある。にしても、無念。

民族/ジェンダーに関わるマイノリティ差別、津波警報下での東京マラソン(しかもゴールは湾岸)の嬉しそうな号砲、オリンピック招致にまつわる言動や不透明な予算、東日本大震災における天罰論/自粛論/夜10時以降のコンビニ閉店論(深夜電力は余っているのに)、表現の自由への挑戦的発言と規制(小説はOKで、マンガはNG)、知事になってからも何十という本を出版(作家の片手間に知事をやっているようなもの)・・・・閣僚なら、どれか1つでも問責決議、辞任論が出るような首長を持つ自治体の住民として、とても恥ずかしい。
 
確かに、これが民主的な選挙の結果、重く受け止めなければならない。 
無念。

2011年4月6日水曜日

温泉パンをゲット・・・・ちょっと重たくて、ちょっと幸せ

栃木県に喜連川温泉という温泉地がある。以前は喜連川町だったのが、合併してさくら市というらしい。宇都宮のちょっと北。
 
以前、氏家という町で中世豪族居館跡を発掘調査に行っていたとき、たまの楽しみが車を出してもらっての喜連川温泉(町の施設で入湯料が安かった)。そのときに食べたのが、喜連川温泉パン。
今は、町村合併でさくら市となり、単なる「温泉パン」と改名したみたいだけど、今日、ゲットした。
 
とにかく、重い。普通のパンは、酵母やベーキングパウダーの効果でフワフワなのだが、あまり膨らんでいないため、重量感がある。
 
小麦粉の味がする。あんパンくらいの大きさだけど、1つ食べればそこそこ満腹感を味わえる。最近は味のバリエーションも増えている(今日は「小倉」を食べた、本当はプレーンが欲しかったのだが売り切れていた)。ちょっとトースターで温めてもいい感じ。
 
[温泉パン くるみ]
明日の朝食は、これに、栃木県産とちおとめの予定。

「温泉パン」東京ではあまり売っていないけど、発見したら、ぜひ、買いです。
おすすめ。ちょっと重たいけど、ちょっとおなかがふくれて幸せなソウル・フードです。
(栃木県でソウル・フードというと「しもつかれ」を挙げる方がいますが、比較的好き嫌いのない私が、唯一苦手な食べ物です。ご存じない方に説明すると、野菜や煮豆や鮭の軟骨=漬け込むモノはそれぞれ家庭で違うらしい=などを、粗くおろした大根おろしで漬け込んで乳酸発酵させた、ちょっとすっぱい保存食です)
 
   
あまり大きな被害が出ていないため、報道されていないけど、県北部はそれなりに被害の大きい地域もある栃木県。農産物の出荷停止や、風評被害も大きい様子。
栃木県民ハーフとして、応援したい。
 
栃木県はまだ桜は咲いていませんでした。今日はだいぶ暖かだったので、きっとすぐ、開花宣言があるのでは?
 
東北新幹線、那須塩原までしか走っておらず、「はやて」とか、「やまびこ」は休止。時刻表が全部、「なすの」(東海道新幹線でいう「こだま」)でした。盛岡から北は走っていて、もうすぐ白河まで、福島までと延びていくとのこと。

2011年4月5日火曜日

花盗人を許せ・・・・悲しみは言い訳にならないけれど

昨日、10年一緒だった桜文鳥と、9年一緒だったシナモン文鳥を同じ日に亡くしました。
 
発作で危篤状態で苦しんでいるところを駆けつけたけど間に合わなかった悲しみ、前から体調が悪くて、肩で弱々しく息をしていたのに、何もしてやれなくて、目を離したすきに息が止まっていた悲しみ。
ニュースを通じて、東北に住む家族を通じて、本当にたくさんの悲しみが押し寄せてくる中、大切な家族の一員を失って、一緒に過ごした年月が胸をえぐるようです。
 
文鳥だし、季節だから、ちょっとだけ花を手向けたい。
桜の老木の幹から、突然飛び出すように咲いている一房の花をもらってきました。

花盗人は罪が重いとも、花盗人は許される風流ともいいます。
でも、その罪を背負うことで、この悲しみを紛らわせることができればとも。

今宵ばかりは花盗人を許せ    ・・・ちょっと破調。



2011年4月2日土曜日

春だから、しのぶちゃん、優雅にベランダで昼寝。

東京には本格的に春が来た。

今日はことに日射しがあたたかく、風もない。
先週末、ソメイヨシノの開花が宣言され、街路樹の桜も日当たりのよい樹は花が目立つようになった。

春の恒例行事。
しのぶちゃん*との再会。(2010年5月10日の記事→しのぶちゃんみどりの黒髪参照)

* 釣り忍だからしのぶちゃん。元はタヌキの釣り忍、釣り下げるための紐も、しっぽも、陶製のとっくりも取れてしまって、顔にだけタヌキだった面影が。

[しのぶちゃん]
優雅に西日を浴びながら昼寝。

家のミニチュアと比較すると、ぽかぽかと暖かいので眠くなって寝てしまった怪獣みたい。


一方、こちらは、北風のなごり。
三足の鉢で、上部構造が大きいために、北風が強い日には、とことこと歩きます。

で、我が家では、アイビーの鉢が溝にはまり込んでしまうたびに、「とーちゃんおしかったね あの橋越えたらフランスだったのにねー」(石川雅之『週刊石川雅之』*(講談社)より引用)、ということで、「あ、またフランスに行きそこなってる」といわれてしまう、ちょっと残念なアイビー。

* 『週刊石川雅之』:あの菌マンガという新しいジャンルを創出した『もやしもん』に先んじる、ちょっとシュールで、ちょっとほのぼのなマンガ。ちなみに、『もやしもん』に登場する農大生「葉月」(主人公と同級生)と、『週刊石川雅之』の高校生「はづき」が同一人物かどうかは明らかにされていない。

[フランスに行きそこなったまま放置のアイビー]

そろそろ北風の季節も終わりだし、元の位置に戻してやるかな。

日脚が伸び、会社終業時間までは明るくて照明を節約できて、暖房に電気が必要なくなり、大消費地東京が電気を使い果たさなくなることで、東北の復興に少しでも役立ちますように。この暖かさが早く東北の地まで届きますように。
心から。

ちょっと復活を

しばらく忙しかったりしたので、更新の余裕がなく、すっかり放置になっていました。
少し復活しようかな。

春だし。
あ、しのぶちゃん(こちらの記事→しのぶちゃんみどりの黒髪参照)、出さないと。