2011年9月4日日曜日

ツール・ド・本屋さん3・・・・求道者の秘かなる情熱『日本の分水嶺』

ツール・ド・本屋さん3店目は、鎌倉。

横浜みなとみらい地区(→前回「ツール・ド・本屋さん2」参照)から鎌倉街道を南下。大船→北鎌倉と抜けて、鎌倉を目指す。

途中。北鎌倉建長寺前を通過。ここには、ちょっと苦い思い出が・・・・(ここでは語らず)・・・・道尾秀介『月と蟹』(文藝春秋、前回直木賞受賞作)作中に建長寺の裏山が出てくるので、それも思い出しつつ、少し気持ちが揺れる。

が、あまりここは集中。鎌倉へ抜ける道は少なく、狭い。天然の要塞都市、東京・横浜方面から抜ける道が限られているため、北鎌倉から鶴岡八幡宮に抜ける道路はいつも混雑している。路肩は狭く、片方は柵のない側溝。

目的の本屋さんは鎌倉駅前なので、八幡宮の正面ではなく、小町通りを抜けるが、今度は観光客の混雑。竹下通りと変わらん。


【3店舗目:鎌倉:たらば書房】
小町通りの喧噪を抜け、反対側江ノ電の方の駅前すぐ。黄色い日よけの、小さな町の本屋さん。
今回訪問の中ではもっとも小さな店。

前に訪ねた方に「すごい」と聞いていたが、実際、すごい。
有名なところでは、千駄木の往来堂書店さんも、町の本屋さんにして選書とセンスで独自の地位を築いているが、もしかすると、それ以上かも。

人文系、自然科学系の選書がすごい。たとえて言うと、往来堂書店と神保町の東京堂書店の1階人文オススメ本を合わせたような選書。雑誌やコミックスも置いているが、主力は圧倒的に趣味的な本。どうも老夫婦らしいお二人でやっている店のようだけど、かなり趣味的で深い。さらっと、チョムスキー『生成文法の企て』とかが平台に置いてある。
鎌倉の本屋さんということで、鎌倉にちなんだ本を買ってすぐに移動だなと思っていたが、甘かった。言語学、人類学、地理学、哲学・・・・ツボにはまる本も多い。じっくりと棚を見ていく。


【購入した本】

ある著者の本が目にとまった。
堀公俊『日本の分水嶺』(ヤマケイ文庫)。

堀公俊さんといえば、ファシリテーション(会議の活性化促進)や企業の意志決定に関わる本を多数出版するその道の専門家。『ワクワク会議』(日本経済新聞出版社、名著です)などは愛読書。で、ヤマケイ文庫???

[堀公俊『日本の分水嶺』(ヤマケイ文庫)]

著者略歴を見ると同一人物らしい。
で、買ってみた。

趣味で分水嶺*ハンター(分水嶺を訪ね歩く人)をやっているらしい。で、日本列島の背骨にあたる分水嶺をひたすら漏れなく、重複なく(=MECEに)語っていく本(この辺が本業の技を思わせる)。
地形、文化、歴史、アプローチの旅程、名物から観光資源まで、鉄道や道路、行政区画と違って、明示的には引かれていない線を、ひたすら南下していく。ところによっては、地形がゆるやかで分水嶺がわかりにくい場所も、人工的に整備された結果、水路が立体交差しているところ、カルスト地形などで地下水路の場合もあって、分水嶺を追うだけでも、かなりスリリング。

* 分水嶺:厳密な定義は難しいが、ざっくりいうと、その線を境に、降った雨が川となって日本海に流れ下るか、太平洋に流れ下るかで区分した場合の境目。

長編旅行ミステリーを読むように読んだ。
スリリングで面白い。

さあ、次は藤沢。
国道134号線を走り、藤沢に抜けよう。

稲村ヶ崎から江ノ島をかすめて、サザンの『希望の轍』のように。
河合克敏『とめはねっ!』(小学館)の舞台だ。

次回へ続く(→次回「ツール・ド・本屋さん4」参照)


【追記】2011/9/5
台風12号による豪雨被害がありました。ちょうどこの『日本の分水嶺』を読んだ後だったので、それぞれの地形、地名がよりいっそう心に刻まれます。行方不明の方々、道路が寸断されて閉じ込められている方々、これから被害が予想される東北・北海道の方々、ご無事を。

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