2015年のベスト10冊を選んでみた(最後)
2015年が終わってしまわないうちに。
といっても、今読んでる本がなかなかよくて、深緑野分さんの『戦場のコックたち』(東京創元社)、まあでもまだ読み終わってないのでベスト10はこのままで。
1.~4.(2015年のベスト10冊を選んでみた。)。
5.~8.(2015年のベスト10冊を選んでみた (2) )。
9. 田口幹人『まちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』(ポプラ社)
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=80080240
本屋タビニストとして、本屋本から1冊。さわや書店フェザン店(これがまたすげー熱量の本屋です。取材させていただきました。)の田口店長の本。これを読むと、熱量や勢いだけではなく、体験に裏打ちされたとてもクレバーな戦略に基づく店頭展開なのがわかる。
最近、本屋本が出すぎじゃないかと思ったりもするのだが、これは、ナイス企画、ポプラ社さんグッジョブです。ノウハウを共有するということではなく、あ、いろいろやっていいんだと思える。
出版記念イベントで田口さんのトークもあった『本屋会議』(夏葉社)もオススメです。
10. トマ・ピケティ、山形浩生、守岡桜、森本正史『21世紀の資本』(みすず書房)
http://www.msz.co.jp/book/detail/07876.html
ピケティブームと呼ばれ、関連書や雑誌の特集も軒並みピケティだった。しかしこれは名著。
今年のベストパフォーマンスブックですな。
上の写真で、カバーがだいぶ傷んでいるのだが、通勤時に毎日持って歩いて、休日ごとに固めて読んで、寝る前に読んで、半月以上かかった。数表もデータも事例も充実していて、時速数ページしか進まないこともある。ざっくり50時間くらいかな。600円の文庫本を1時間で読み終わるとすると、600円/時、50時間で5500円だと、110円/時ではないか。安い。
というのは、半分冗談として、この50時間が苦にならない。ていねいに事例を挙げ、個々の事例が合わさって現象を描き出し、現象が集まって法則をあぶり出す。すばらしい読書体験。良質な大河小説や3部作くらいの映画を観ているようだった。名著。
+1. 山田あかね『犬に名前をつける日』(キノブックス)
http://kinobooks.jp/lp/inu-namae/
番外にこちらの1冊を。
映像作家、映画監督の山田あかねさんの同名映画『犬に名前をつける日』の原作本。
原作本といっても、ストーリーをたどるのではなく、映画を撮るに至るまでを描いたプレストーリー。
愛犬ミニが癌に倒れてからの悲嘆、藁にもすがる思いでスピリチュアル的な治療も試す、犬にかかわる仕事がしたいと試行錯誤する日々、自分の専門領域で犬のためにできることがあるのではという気付きが描かれる。
映画のテーマは犬猫の殺処分になったが、この本は、そこではあっさりとしか描かれなかった、家族(ペットも含む)と、社会と、仕事とどう向き合って生きていくのかというテーマに踏み込んでいて、とても心を動かされる。
映画『犬に名前をつける日』も、テーマの重さに負けない、小林聡美さんの好演もあって、あたたかい気持ちになれるいい映画(公式サイトはこちら、2015年10月~全国各地で上演中)です。
10冊+1ということで挙げてみたが、いろいろ抜けてるような気がする。
ジャケ買い派としては、牧野千穂さんが装画をしているケン・リュウ『紙の動物園』(早川書房)とか、酒井駒子さんの装画が奇跡的な江國香織編『活発な暗闇』(いそっぷ社)、装丁がすげーツボな川上未映子×穂村弘『たましいのふたりごと』(筑摩書房)とか、絵本だと、怖いけどすげー惹かれる怪談えほん綾辻行人×牧野千穂『くうきにんげん』(岩崎書店)とか、あああ。
きりがないので、とりあえず、ここまで。
来年も素敵な本と出会えるとよいですな。
↓以下、過去記事。
1.~4.(2015年のベスト10冊を選んでみた。)。
1. 宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163902944
宮下奈都『神さまたちの遊ぶ庭』(光文社)
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334978075
蜂飼耳・牧野千穂『ゆきがふる』(ブロンズ新社)
http://www.bronze.co.jp/books/post-86/
2. 辻村深月『朝が来る』(文藝春秋)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163902739
3. 澤田瞳子『若冲』(文藝春秋)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163902494
4. 米澤穂信『王とサーカス』(東京創元社)
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488027513
米澤穂信『真実の10メートル手前』(東京創元社)
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488027568
5.~8.(2015年のベスト10冊を選んでみた (2) )。
5. ミランダ・ジュライ、岸本佐知子『あなたを選んでくれるもの』(新潮クレストブックス)
http://www.shinchosha.co.jp/book/590119/
6. 岸政彦『断片的なものの社会学』(朝日出版社)
http://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255008516/
7. ピーター・メンデルサンド、細田由依子『本を読むときに何が起きているのか 言葉とビジュアルの間、目と頭の間』(フィルムアート社)
http://filmart.co.jp/books/composite_art/honwoyomutoki/
8. 丸山正樹『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳者』(文春文庫)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167904203
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